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仕事と家族が共存するコワーキングスペースに――JUSO Coworkingの挑戦

大阪・十三のコワーキングスペース「Juso Coworking」の様子
大阪の商業地域として古くから知られる十三。そこで商業ビルとして50年の歳月を刻んできたのが水交ビルだ。しかし、昨今の不動産不況の波に飲まれ、テナントスポンサーは減少傾向だった。レンタルスペース事業を長く営んできた水交ビルだが、以前のように入居者が集まらなくなりつつあった。
こうした中、オーナーの深沢幸治郎さん・深沢周代さん夫妻はTwitterを通じて、「コワーキング」という言葉に出会い、ビルスペースの新たな利活用のアイデアとして運営に取り入れた。コワーキングスペース「JUSO Coworking」が産声を上げたのは2010年である。
JUSO Coworkingは、コワーキングにとどまらないスペース活用を志向していることが新しい。イベントを開くと家族連れが集い、父親が働きながら、母親が子供の面倒を見るといった光景が見られる。働く空間と遊ぶ空間を同居させているのだ。2011年には近隣の保育園とも提携し、安心して子供を連れてくることができるコワーキングスペースの運営にも舵を切った。
コワーキングは文脈によっては、「起業家やWeb関係者のための働き方」ととらえられる向きもある。だが深沢さん夫妻は、「自分たちが本当に欲しいと思うスペースを作り続けていたら、家族を中心とした地域密着型のスペースになっていった」と話し、独自路線を貫く。
仕事と生活の共存を目指すJUSO Coworking。その成り立ちから今後の展望、コワーキングに対する考え方を振り返り、「サイボウズLive」を使ったコワーキングスペースの運営について聞いた。
不動産不況に対する一縷の望み
――JUSO Coworkingの成り立ちについてお聞かせください。

Juso Coworkingがある水交ビルは、設立から50年が経つ老舗ビルだ
深沢幸治郎:当初はWebデザインの事務所として水交ビルを使っていましたが、空き場所の有効活用を考え、Webにかかわるフリーランスの人がつながりあえるギルド(徒党)のような場所を作ろうとしました。今から1,2年ほど前より、ビルスペースをレンタルしていたのですが、不動産業界の不況にリーマン・ショックが相まって、徐々に見学に来る人がいなくなってしまいました。
かつての不動産ビジネスは、空き場所を出せばテナントが自然に集まって来ましたが、今はそのモデルでは太刀打ちできなくなっています。これまで水交ビルは長期間スペースを貸し出すテナント形式のビジネスを展開していたので、コワーキングのようなスペースの時間貸しという発想がなく、ビルの経費が抑えられずにいました。
深沢周代:私たちはかつて京都に住み、演劇に携わっていました。京都では学校や地域団体が稽古場を無料で貸し出してくれました。その後結婚して実家の大阪に戻ったのですが、人が集まって無料で利用できる場所はまったくありませんでした。そして、結婚をきっかけに父のビル経営業を夫婦で継ぐことになり、水交ビルの経営に携わるようになりました。
当初は演劇の稽古場に似たレンタルスペースを提供していました。次第に劇団や学生の方が集まってくれるようになったのですが、より一人で働いているより若い世代の人が、気兼ねなく来てくれる場所にしたいと思っていました。こうした折、2010年8月にTwitterでコワーキングスペースの「Pax Coworking」のオープンを知り、コワーキングという新しい働き方・考え方に初めて触れました。
知り合いだけで集まり、徒党を組むようなスペースの運営では、ジリ貧になることが見えていました。決まったテナントに長期間場所を貸すのではなく、人が常に滞留し、流れ、多種多様な人が集まってくる場所にした方がおもしろくなると考え、コワーキングスペースを開くことにしました。それがJuso Coworkingです。わたしたちにとってコワーキングという空間の使い方は、レンタルスペースよりも理にかなっていたのです。
生活と仕事が集まる独自路線のコワーキングスペース
――レンタルオフィスのビジネスモデルの変化とコワーキングという新しい働き方が相まって、今のJuso Cowokingの形が作られていったのですね。

JUSO Coworkingを夫婦で運営する深沢幸治郎さん(右)と深沢周代さん
深沢幸治郎:2010年8月にコワーキングスペースの開設を考えましたが、その時は月単位やドロップインと呼ぶ1日単位のスペース貸し出しでは、顧客単価が低く、店の回転率も少なくなるのではないかと懸念していました。また最初は、社長である父からコワーキングスペース運営の了承も得られませんでした。
でも、私たちには不動産ビジネスに対する危機感があり、昔のようにただ機会を待っていても、人やテナントが入って来てくれないことは分かっていました。だから、最初の一歩を踏み出すことにしたのです。
深沢周代:JUSO Coworkingは2010年12月にオープンしましたが、最初はお客様が来ずに苦戦しました。事前に女性の知人に「どんなコワーキングスペースだったら来てみたいか」を聞き、その要望を反映させたのですが、やはりお客様は来てくれない。思い返せば、女性は自分の部屋で好きなものに囲まれていたいし、外出の頻度もそこまで高くない。行きたい場所と実際に行く場所は違ったのですね。そこで1つ目の方向転換として、深沢(幸治郎さん)の知人であるWeb関連のフリーランスが集まる場所にしてみようと思いました。
すると、Web関連の人に来ていただけました。そのうち、来た人同士が仲間になり、仕事の打ち合わせなどでスペースを使ってくれるようになりました。そして徐々にJUSO Coworkingの運営にも携わってくれるようになりました、こうした「コアメンバー」全員が木曜日に集まることを決めた時から、人の回遊が増え、Web関連以外の人も足を運んでくれるようになったのです。
深沢幸治郎:この集まりが「Jelly」(カジュアルなコワーキングイベント)の役割を果たしたのでしょう。コアメンバーを中心にJUSO Coworkingに携わるチームができ、2011年5月からは下半期の運営についてメンバーで議論し始め、Webサイトの更新やFacebookページの開設など、多くの企画が自主的に生まれてくるよになりました。開設から半年以上が過ぎた段階で、コワーキングに対する関心の高まりも感じ始めました。
――コワーキングの運営では、人が能動的に集まってくる仕掛けを作ることが大事ですね。立ち上げ当初の運営手法から柔軟に方向性を変えながら、独自路線を模索してきたのでしょうか。
深沢周代:実はそこまでしっかりと考えていたわけではなくて、私達が「こんな場所があればいいな」と思ったことをJUSO Coworkingの運営に取り入れてきた形なのです。独自路線というか、特色の1つだと思っているのが、JUSO Coworkingを「子供を連れてこれるコワーキングスペース」にしたことです。
私は子供が生まれた後も兼業主婦として仕事を続けていましたが、その時に改めて仕事と子育ての両立は大変だと実感しました。そのうち、ママ友を作ったり、働きながら子育てができる場所が欲しくなり、「家族ラボ」という集まりを開いて同じ思いを持つママ友と親交を深めていました。JUSO Coworkingを運営しているので、どうせなら家族が集まれる空間にしてみたいな、それならコワーキングスペースと一緒にやってしまおうと。これが2つ目の方向転換だったのかもしれません。
そこで、2011年9月にコワーカーと子供連れの親子向けのJellyを開催しました。このイベントでは、1つの部屋に仕事をするスペースと子供と遊ぶスペースを共存させました。物理的な間仕切りはなく、1本のテープで境界線を作ったのみです。「やってみたい」という思いが先立ち、イベントが形になりましたが、結果的には専業主婦の方が仕事をしながら子供をあやす場面や、コワーキングスペースに集まった人が議論に熱中する光景がありました。まったく異なる2つの立場の人が集まり、共存できたのには驚きました。

Juso Coworkingが実施するJellyでは、仕事と家族(生活)が同じスペースに集まり、それぞれの時間を過ごす
結果的に、イベント当日は約50人の親子が来てくれました。主婦の多くは子育てを始めると、家や近隣から出る機会が少なくなります。わたしも「気分転換に遠出がしたい」と思うことが多かったです。そしてJellyは、「外出した感覚」が得られるイベントだった。だから奈良や東大阪といった遠方からわざわざ十三に来てくれる主婦がいらっしゃったのでしょう。
家族連れのコワーキングを実施したことで、JUSO Coworkingに来たことのない人やお子様がいらっしゃる男性からの問い合わせも増えました。今、JUSO Coworkingは仕事、育児、家族にかかわる男女が集まる場所になりつつあります。家族で来て仕事をし、子供とも遊べる――。そんなコワーキングスペースがあってもいいのだと思いました。
私達が「やりたい」「ほしい」と思うことを1つずつ実現していったことが、JUSO Coworkingの今を形作りました。それはいきあたりばったりの運営だったのかもしれませんが、「この姿こそが、JUSO Coworkingなのだ」と実感しています。まずはやってみる、これにより得られたことがたくさんありました。
ゆっくりしながら、笑顔でいられる。それが”十三”コワーキング
――今、コワーキングという言葉が流行しており、「Web業界のスタートアップや起業家」という文脈で語られているように感じます。これに対してはどのような印象をお持ちですか?

Juso Coworking内にはWebや家族関連の書籍を置いた共同書架もある
深沢幸治郎:もちろんコワーキングには「新しいビジネスや起業支援を支援する」という一面がありますが、JUSO Coworkingではそれに特化したサービスをしようとは思っていません。そういったビジョンをお持ちの方も含めて、多種多様な人ができる限りゆっくりとした気持ちで、ニコニコと仕事ができる場を目指していきたいと思っています。
最近嬉しかったことが2つあります。1つは現在JUSO Coworkingにいらっしゃっる方が、故郷から届いたりんごを持ってきてくれたこと。店側とお客様という立ち位置ではなく、事前と近所付き合いのような関係ができてきました。2点目は、立ち上げ時に協力してくれた人が1年ぶりに来てくれたことです。一度でもJUSO Coworkingにかかわった方が、気軽に帰ってこれる場所になりつつあると実感しました。
深沢周代:JUSO Coworkingを運営している立場から言うのも変なのですが、私たちって商売っ気がまったくなくて(笑)。もちろんJUSO Coworkingを頻繁に使ってほしいとも思っていますが、ふとした時にお茶をしに来てくれるだけでも私たちはとてもうれしい。来てくれる人とは、たとえ1年経っても「こんにちは、ひさしぶりですね」と笑って話し合える間柄を作っていきたい。そんな気持ちで運営に携わっています。
積極的なビジネス支援や人脈のあっせんといったサービスを希望される方は別のスペースを利用し、ちょっとだけ気分を変えたいときにJUSO Coworkingに立ち寄ってもらう。それが理想の形かもしれませんね。
子育てをしている私でも使えそう――サイボウズLiveを選んだ理由
――JUSO Coworkingでは、日々のスペースの運営やイベントの実施にあたり、メンバー間の情報共有に「サイボウズLive」をお使いいただいているとお聞きしました。
深沢幸治郎:JUSO Coworkingを始める前に、本業であるWeb制作上のプロジェクトグループで情報共有をしていました。無料のプロジェクト管理ツールを探しており、サイボウズLiveを見つけたのです。無料で使えるプロジェクト管理ツールを幾つか比較検討した結果、親しみやすいユーザーインタフェースと必要な機能がコンパクトにまとまっている点が良いと思い、導入してみることにしました。
現在はサイボウズLiveを、JUSO Coworkingの運営メンバーとの情報共有に使っています。主に使うのは「掲示板」で、Jellyや勉強会などテーマごとにトピックを分けて運用しています。
当初はサイボウズLiveでオンラインの情報共有をすると、コワーキングスペースに来てくれるメンバーが減るのではないかと思っていましたが、オンラインでのやりとりを通じて、いつでも協力してもらえる体制が自然と出来上がっていきました。Jellyの開催時にはメンバーから企画や資料が自主的に上がってくるようになるなど、サイボウズLiveが運営のハブになってくれたのです。
雑談やちょっとしたアイデア出しにはSkypeのミーティング機能を使い、やるべきことが形になった状態でサイボウズLiveの掲示板に書き込むなど、用途に応じてツールを使い分けるようにしています。サイボウズLiveはログとして議論がずっと残るのがいいですね。

Juso Coworkingのグループ
深沢周代:私はプロジェクト管理ツールのことは正直良く分かりません。さまざまなツールを比べてみたのですが、その多くはまず見た目がかわいくないし、パッと見てどの画面にどの機能があるか分かりませんでした。プロジェクト管理ツールは外国産のものも多く、ITに慣れた人が使うものに見えました。その時は「プロ仕様のツールを使うくらいならメールでいいやん」って思っていました(笑)。
その点、サイボウズLiveは第一印象で「単純そうで分かりやすい」と感じました。サービス名や機能がキャッチーな日本語で書いてあり、サービス名も「サイボウズ」と書いてあり、なんだかとっつきやすいなと。画面を開いた瞬間に「あ、これなら子育てをしながら仕事をしている私でも使えそう」と思い、安心しました。やわらかい雰囲気(の画面)なので、気軽に書き込みもしやすいですし。
――サイボウズLiveでは、「分かりやすさ」「簡単さ」を追求しており、これが伝わったことがうれしいです。「かわいい」という評価も光栄です。ITリテラシーにかかわらず、あらゆる人に使ってもらいたいと思っています。
深沢幸治郎:そういう意味では、サイボウズLiveってコワーキングに向いていると思います。コワーキングをしている人は、コワーキングスペースに訪れ、仕事を通じて人々とつながっていきます。サイボウズLiveはプロジェクトがない状態でも個人で登録でき、プロジェクトが発生した時点で登録ユーザー同士がつながったり、別のグループに属している人を自分たちのグループに招待したりできます。この点が、コワーキングという働き方にマッチした「人ありき」のサービスだと感じました。逆に、ほかのプロジェクト管理ツールは「プロジェクトありき」で使うサービスという印象です。
サイボウズLiveの「掲示板」「ファイル共有」「ToDo管理」「カレンダー」という4つの機能を使えば、われわれの情報共有において過不足は出ません。家族の予定共有や地域の集まり・趣味関連の情報共有にも使える点がいいですね。メールだとログが見にくいですが、サイボウズLiveだと過去のディスカッションをすぐに確認できますし、やっぱり便利です。
――サイボウズLiveを使う中で、ここを改善してほしいという点はありますでしょうか?
深沢周代:共有フォルダにアップしたファイルのコメントが残せるようにしてほしいですね。メンバーによるファイルの確認や修正の指示が出せればと思います。また、掲示板やコメントに添付したファイルは、共有フォルダでは「添付ファイル」として処理されるので、これを共有フォルダ内でフォルダ分けして保管できれば、より使いやすくなりそうです。
深沢幸治郎:私は掲示板にアーカイブ機能が欲しいですね。議論が終わった掲示板はToDoリストと同様、「完了」としてホーム画面から見えないようにしておき、見返したい時にすぐに探せるようにしてほしいです。掲示板を中心に使っているので、どの掲示板で議論をすべきか分からなくなってしまったことがありました。
誰もが気軽につながりあえる場に
――ありがとうございました。最後にJUSO Coworkingの今後の展望についてお聞かせください。
深沢周代:JUSO Coworkingは試行錯誤をしながら今の形になりましたが、今後はもっと使っていただける人を増やしたいです。そのために、2012年以降にリノベーションを考えています。ミーティングなどに集中するスペースは3階に、自由にコワーキングができるフリーアドレスのようなスペースを4階に作る予定です。元々はテナント向けのビルなのでオフィス感が強いのですが、誰もが気軽に集まれる開放感にあふれた場所にしたいと考えています。
深沢幸治郎:運営としては、「家族ラボ」の知見を応用していきたいです。子供向けのスペースを用意しておもちゃを置いたり、子供が歩き回れるように角のない空間にしたい。また2011年に提携した近隣の保育園との協力で、親がJUSO Coworkingに連れてきた子供を保育園に送り迎えするというように、家族が臨機応変に動けるような場所になればと思います。
2011年はコワーキングという言葉が注目を集めましたが、これからはコワーキングという言葉や概念はシェアオフィスのようにメジャーになると思います。わたしたちもコワーキングという言葉にこだわらず、誰もが気軽にコミュニケーションできる場として、JUSO Coworkingという場所を作っていきたいです。

お茶を飲みにいくように気軽に足を運べるのがJuso Coworkingの魅力だ
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