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関西で見たコワーキングという”リアル”――コワーキング・フォーラム関西 2011

コワーキング・フォーラム関西 2011の様子。前方にはプレゼンスペース、後方にはコワーキングスペースを設置。参加者の意思で、イベントを自由に楽しめる形にした
人が1つの場所を共有しながら、仕事をする「コワーキング」という働き方に耳目が集まったのは、2011年に入ってからだろうか。現在、コワーキングスペースは全国で50カ所以上ある。さまざまな人が集まり、仕事やコミュニケーションをする場として機能している。
2011年12月11日、コワーキングをテーマにした日本初の本格イベント「コワーキング・フォーラム関西 2011」が神戸にて開かれた。募集した100名の参加者枠は瞬く間に埋まり、その熱気を持続したままイベントを迎えた。会場はプレゼンテーション聴講とコワーキングのスペースを設置。プレゼンを聞くもよし、当日出会った人達でコワーキングを始めるもよし。会場でコワーキングが始まり、Webサービスのモックアップを作り上げた人たちがいたのには驚かされた。
コワーキングへの関心の高さを浮き彫りにした同イベント。企画したのは、コワーキングスペース「カフーツ~コワーキング@神戸~」を運営する伊藤富雄さんだ。伊藤さんは2009年12月21日に「カフーツ~ノマドからCoworkingという働き方へ」というブログを書き、「コワーキング」という言葉が注目を集める前から、啓蒙に務めてきた、そんな伊藤さんの呼び掛けに関西のコワーカーが応える形で、今回のイベントが形になった。そこから2カ月弱でイベントが実現、企画運営には「サイボウズLive」を使った。
「イベントではコワーキングを定義するのではなく、コワーキングの今を可能な限り伝えたかった」と伊藤さんは語る。同イベントを統括したコワーカー兼デザイナーのしかたこうきさんを交え、「関西発、コワーキングの成り立ちと現状」を聞いた。

コワーキング・フォーラム関西 2011を形にしたカフーツ ~コワーキング@神戸~ 代表の伊藤富雄さん(右)とフリーランス デザイナーのしかたこうきさん(左)。真ん中のキャラクターはフォーラムでもたびたび登場した伊藤さんの(!?)マスコット
コワーキングとの出会いと試行錯誤、そして潮目
――コワーキングとの出会いは?
伊藤:私は3年半ほど前から「ネットマーケティング研究会」を開き、Webサイト制作やプログラミングなどの勉強会を実施してきました。もともとはセミナー形式でしたが、プロアマを問わず集まる参加者とフリーにディスカッションをした方が盛り上がるし、面白いと感じました。研究会では「情報のおすそ分け」をしていたのですが、ネットマーケティングという特定分野に限らず、仕事に関する情報を共有し合う場の必要性を感じていました。
私は1999年から一時期、ホームオフィスで仕事をしていました。今で言う「ノマド」な働き方ですが、一人で仕事をしていると生活とごちゃごちゃになったり、孤独を感じることもありました。仕事を進める上で、人とコミュニケーションをする場は不可欠です。議論を通じてアイデアが形になり、仕事は進むものです。人と人がつながりあう場所を作ろうと考えていた折に、「コワーキング」という言葉に出会いました。
コワーキングのことを知った当初、コワーキングスペースは世界に400カ所ほどありました。中でもシアトルのコワーキング事例が強烈に印象に残りました。日本ではまだコワーキングという働き方が認知されていなかったので、私自身がコワーキングを実践してみることにしたのです。
――ブログで「カフーツ~ノマドから Coworkingという働き方へ」を書き、2009年12月に日本で始めてコワーキングを名乗ったのが伊藤さんです。一方で、コワーキングが注目を集め始めたのは、2011年からだと記憶しています。その間、コワーキングにはどういった動きがあったあったのでしょうか。
伊藤:2010年5月にコワーキングスペース「カフーツ」を開きましたが、半年くらいは人が集まりませんでした。2010年12月時点では、日本のコワーキングスペースは、カフーツを含め3カ所しかなかったと記憶しています。コワーキングスペースに対するニーズは多かったのですが、実際に来てくれる人は少なかったのです。
実は、当初のコワーキングスペースの運営は「失敗」でした。米国のようにコワーキングスペースを開放するだけでは、人が訪れてくれないのです。糸口が見えたのは2011年5月、「Jelly!」と呼ぶイベント形式のコワーキングを始めたことです。コワーキングのテーマを決め、定期的なイベントとしてコワーキングスペースを開放すると、人が集まってくれるようになりました。きっと、参加者側はコワーキングに参加するきっかけが必要だったのでしょう。
「集った人が自分の仕事をしながら、時々おしゃべりをしてその場を楽しむのがJelly!であり、これこそコワーキングだ」と気付きました。その後はJelly!を定期的に開催し、ほぼ毎回初参加の人が来てくれるようになりました。コワーキングが徐々に浸透していく予感がしたのはその頃です。
こうした試行錯誤のさなか、東京でも動きが見られるようになりました。既に、2010年の夏にオープンしていた「PAXCoworking」から徐々にコワーキングが広がり始める中、2011年3月にオープンした「下北沢オープンソースCafe」がガレージをコワーキングスペースに改装する様子を、ブログで配信していました。マスターの河村奨さんはオープンソース関連のコミュニティに所属しており、そこを中心にコワーキングが広がったのだと思います。また東日本大震災を機に場所にとらわれない働き方が再考される中で、コワーキングにも徐々に注目が集まっていきました。
働き方についてみんなで考え、「見える化」する

参加者同士が自由に集まり、議論できるのがコワーキングの醍醐味。イベント当日は、会場にいくつものコワーキングスペースが生まれた
――コワーキング・フォーラム関西 2011は、こういった動きを受けて開催を決めたのでしょうか。
伊藤:今は東京を中心にコワーキングが広がっていますが、東京以外のコワーキングへの取り組みや現状を伝えたいと思ったことが発端です。関西では、神戸、大阪、京都を中心にコワーキングスペース運営者やコワーカーが集い、仲間を見つけ、小さなコワーキングのつながりが形成されつつあります。地域に根付いたコミュニティという核がまずあり、それがコワーキングに発展している。そんな場をもっと生み出したいと思ったのです。
同時に、コワーキングに対する正しい情報を伝えたかった。「Foursquare」や「Flickr」はコワーキング発祥の米国のWebサービスであり、成功モデルです。その流れを受け、ベンチャーキャピタルはコワーキングスペースに集まるスタートアップ企業に投資を重ねていますが、日本では「コワーキング=成功物語」という面だけがクローズアップされているとも感じていました。コワーキングはあらゆる人の働き方にかかわるものであり、もっと自由に、誰もが取り組めるものです。決して「一部のすごい人たちの働き方」ではありません。
そこで、今コワーキングにかかわっている人たちの「現状」を伝えたいと思いたち、コワーキング・フォーラム関西 2011を始めることにしました。まずは会場を押さえ、2011年10月15日にカフーツのUstreamでフォーラム開催を公言。そこから2カ月弱で、イベントを開催することになったのです。
――いざ宣言してみると。応募者数の100人を超える140人の参加表明があり、当日は会場が満員になるほどの盛況なイベントになりました。プレゼンテーションを聞く場所とコワーキングスペースを1つの会場に同居させているのには驚きました。

コワーキング・フォーラム関西 2011は、「コワーキングってなんだ?」という問いかけを参加者全員が考える場となった
伊藤:コワーキングの特徴は多様性です。プレゼンテーションを聞く人もいれば、会場で仕事をする人がいてもいい。イベント開始の数時間前からコワーキングスペースを開放したのですが、そこで仕事を始めてWebのモックアップを作り上げた人もいた。これには驚きました。コワーキングで重要なのは、参加者がコワーキングという場になじもうとする意識です。それが色濃く出たイベントでした。
高校生が参加してくれたことも印象的でした。働くことを真剣に考え、語り合う仲間や機会が欲しいという人が、老若男女を問わずいることが明らかになり、イベントを通じてこういった現状を共有できたと感じています。また、フリーランスの方にも多く参加いただきました。フリーランスは世間的には「気ままな生き方をしている」と思われることもありますが、フリーになるという覚悟を持った人が集まっていることも当日の様子から伝わって来ました。
仕事はつらく、厳しいものではなく、楽しいものです。コワーキングは、仕事の進め方や選び方をさまざまな立場の人が共有し、「見える化」する仕組みだと実感しました。仕事に対して一人で悩んでいる人も、コワーキングスペースに来ると、ほかのコワーカーに勇気づけられる――。コワーキングが持つ場としての意義を強く感じました。
オンライン、電話で議論、決定事項はサイボウズLiveで共有
――コワーキング・フォーラム関西 2011をわずか2カ月弱で実現したことには驚きました。コワーカー同士のつながりが強固だったからこその結果だと思いました。そこでの情報共有に「サイボウズLive」をお使いいただいた。
しかた:実際にイベントが進み始めたのは10月末です。20人以上が運営に携わる形になったので、プロジェクト管理ツールは必須でした。メンバーが運営する大阪のコワーキングスペース「JUSO CoWorking」では、情報共有ツールに「サイボウズLive」が使われていました。100名までは期間限定で無料とのことだったので、使わせていただくことにしました。
活用した主な機能は「掲示板」「ToDoリスト」「共有フォルダ」です。特に掲示板は、伊藤さんによる「コワーキング・フォーラム関西 2011の開催宣言」や予算管理、機材の準備など、今回のイベント運営に必要なすべての情報を共有・集約しました。掲示板でのやりとりから期限が定まったタスクは「ToDoリスト」に振り分け、資料の情報には「共有フォルダ」を使いました。

コワーキング・フォーラム関西 2011のサイボウズLiveトップ画像
――サイボウズLiveの基本機能をフルにお使いいただけた形ですね。
しかた:実はフォーラムの開催までに、スタッフ全員が顔を合わせたのは1度だけだったのです。初回の会合の後に伊藤さんが「あとは会わなくてもいけるっしょ」と……。その後の運営はFacebookやチャット、電話も併用して進め、サイボウズLiveは決定事項の共有に使いました。
イベントの統括として、メンバーの「最終ログイン」の時間をチェックしていました。誰がサイボウズLiveにログインして情報を確認しているかをチェックでき、個別の連絡をするのに便利でした。サイボウズLiveを使うことで、少なくとも全員が顔を合わせなくても、運営が進むことを実感しました。
私はこれまで、舞台公演の制作運営に携わったことがありました。公演が近づくにつれて、ミーティングや顔合わせの機会が多くなります。でも、今回のイベントはオンラインを中心に進めていけました。最初は過去の経験上、「2カ月で100名規模のフォーラムを成功させるのは無理ではないか」と思っていましたが、それが実現してしまった。サイボウズLiveがなければ、コワーキング・フォーラム関西 2011は成功しなかったといっても過言ではありません。
伊藤:私は代表として、各担当者を信頼し、仕事を任せるスタンスを徹底し、軌道修正が必要な場合のみ意見を出すように努めました。代表が逐一口を出すのではなく、まずはメンバーを信頼することがプロジェクトの成功につながると確信していたからです。
そこでよく使ったのが、iPhoneアプリ「サイボウズLive for iPhone」です。プロジェクト全体がどう動いているのかをリアルタイムに把握するためにiPhoneアプリを使い、ここぞという時にコメントを残していきました。
――サイボウズLiveをお使いいただいた上で、機能に対する改善点や要望はありますか。
伊藤:知りたい情報に即座にアクセスできるようになってほしいです。情報が増えてくると、どの掲示板やToDoリストで議論が行われていたかを把握できなくなりました。「グループ内検索」を使っても、該当するトピックが見つからず、過去に立てたトピックと同じ内容の掲示板を作成してしまったこともありました。例えばFacebookのように、自分宛のメッセージやフィードが届いたことがリアルタイムに分かる簡単なチェッカーがあるとうれしいです。
しかた:私はデザイナーの観点から、細かな部分のインタフェースを改善してほしいです。例えばToDoリストの「✓」のマークについて、クリックできると思ったらできなかったり。またiPhoneアプリで一画面前に戻ると思って左上のボタンを押すと、グループ全体の画面に戻ったり、などです(編注:2011年12月14日のサイボウズLive for iPhoneアップデートで改修済み)。エンジニアの方が考えたデザインだという印象を持ったので、より一般的なデザインになれば、もっと使いやすくなると感じています。
コミュニティに根ざしたコワーキングへの期待
――ありがとうございました。最後に、コワーキングに対する展望を教えて下さい。

コワーキング・フォーラム関西 2011を実現したメンバー
しかた:コワーカーの視点で話します。誤解を恐れずに言うと、今の関西のコワーキングは少し物足りないと感じています。コワーキングスペースに集まった人が別々の仕事をしていたら、それはネイバーフッド(隣人)でしかないなと。本当の意味でのコワーキングは、スペースに仕事が集まり、それをコワーカー達が顔を向き合わせて取り組むことではないかと思っています。
私はコワーキングをともにする戦友がほしいし、「助け合い」の面がより出てきてほしい。コワーキングスペースには「できる人や意識が高い人」だけが集まるのではなく、本当にいろんな人に来てほしいと思っています。そういう意味で、コワーキングという働き方がもっと一般的に広がってほしいですね。
伊藤:まずは関西のコワーキングメンバーを増やして、コワーキングを軸にした人同士の横のつながりを作り、ユーザー同士でコワーキングの輪が広めていきたい。私はそのスイッチを押す役割を担う心持ちでいます。
コワーキングは「場所」ではなく、「人」のつながりによるもの。人同士によるコミュニティが軸にあって、そこで人の感情や情報が共有されるものだと信じています。コワーキングは、コミュニティに能動的に参加する1つの手段です。
カフーツは、コワーキングを志向する人同士が集まるための受け皿で在り続けたいし、各自が仕事で持ち味を発揮しあえる場所にしていきたいですね。

「コワーキング、最高!」と意識を共有し、幕を閉じたコワーキング・フォーラム関西 2011。今後、日本全国でコワーキングが盛り上がるという期待を抱かせるイベントだった
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