大人の遊び心は、教室では学べない――大ナゴヤ大学は地域活性化の成功モデルを目指す


大ナゴヤ大学を運営する加藤慎康さん(中央)、授業コーディネーターの大野嵩明さん(左)、生駒郁代さん(右)

自分の職場を超えて、日々活動する人たちがいる。都心を中心に「朝活」や「週末大学」には多くの人が集い、活況を呈している。新しいワークスタイルやライフスタイルを志向する人が増えているのだろう。

名古屋にもそんな場所がある。「大ナゴヤ大学」(NPO法人 大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワーク)は、生涯学習を掲げた教育活動に重きを置き、名古屋に関連するさまざまなテーマについて学び合う場を提供している。参加者は「教える側」と「教わる側」を自由に行き来する。モットーは「学び合い」で、一方的な授業は存在しない。キャンパスはショップや学校、企業など、名古屋のあらゆる施設が寺子屋だ。授業スタイルも施設も一般の大学とは一線を画している。

大ナゴヤ大学の活動は2009年に始まった。そこからわずか2年の間に、学びの場に集った参加者は2400人を超えた。地域を活性化したいという住民の思いが重なり、求心力を高めている。「ナゴヤを生涯学習の場にして、地域活性化の成功モデルになりたい」――。屈託なく話す学長の加藤慎康さんの言葉は熱を帯びている。その眼差しの向こうには、「名古屋の未来」を常に見据えているかのようだ。

地域住民がそれぞれの立場で、壮大なキャンパスに名古屋の魅力を描く。「大ナゴヤ」は、もっと大きくなっていくのだろう。その活動の一端を、「サイボウズLive」が担っている。

「ユニークな文化を、誇りを持って継承していく

――大ナゴヤ大学の活動について教えてください。

加藤:名古屋という地域は、店舗や昔ながらの商店街といったコミュニティと都会が共存しています。しかし都市や地域として注目が集まるのは東京、大阪が中心であり、「名古屋が忘れ去られてしまうのではないか」と感じていました。名古屋のいいところを発掘し、地域のファンを増やしていきたい。住んでいる人に名古屋を「自分ごと」として考えてもらいたい。こうした思いから、「大ナゴヤ大学」の活動が始まりました。

「大ナゴヤ」という名称を付けたのは、名古屋を中心に近隣を巻き込んだ市民活動を展開したかったからです。西は三重県から、東は静岡県、はては岐阜県まで、名古屋を中心とした半径100キロ圏内の街と人がつながりあう大きなコミュニティーになればと思っています。

授業「大切な人の笑顔が見たい!  〜あなたの“幸せ創造力”を鍛えよう〜 」の一コマ

――名古屋を中心にした地域活性化のコミュニティーなのですね。名古屋は日本の大都市の1つであり、「忘れられている」という意見は意外でした。

加藤:実際、「名古屋ってどうなの?」と住人にアンケートを実施したのです。すると回答者の8割が「いいところがない」という答えでした。多くの人が、名古屋は「本当に何もない」と思っている。

でも実は、名古屋ってとてもユニークな文化がたくさんあります。例えば喫茶店の「モーニング」。いつ喫茶店に行ってもモーニングを頼めば、トーストとゆで卵と飲み物が出てくる。名古屋以外にはない特有の文化ですよね。

ただずっと名古屋に住んでいると、こうした文化を当たり前ととらえ、その魅力に気づきにくくなるのかもしれません。2011年4月に大ナゴヤ大学が企画・制作でかかわり、出版した著書「なごやのたからもの」のように、「10年残っていて、これからも残していきたい文化」って、名古屋にはたくさんあります。われわれは、大ナゴヤ大学という場を通じて、住人にその魅力をまず知ってもらい、外部に発信していきたいと考えています。

学びは誰に対してもフラット、そこが出発点だった

――改めて、大ナゴヤ大学を開設したきっかけは何だったのでしょうか。

加藤:原体験は、阪神淡路大震災のボランティア活動に参加したことです。参加者が復興作業に注力し、図書館などの施設で何日も寝泊まりすることもいとわない姿を見て、「みんな神戸が好きなんだ」って人の温かさを感じました。その時は、私の地元である名古屋でも「名古屋が好きだ」と言ってくれる人が増えればいいなと思ったのですね。

十年以上務めた会社を辞め、名古屋を中心とした「学びの場」の実現の可能性を探り始めました。地域活動について学びたいと思い、ふとしたきっかけで「シブヤ大学」の門を叩きました。そこでは参加者がまるでホームパーティーを楽しむかのように、学びを楽しんでいた。こんなに優れた環境で、無料で学ぶことができる場がある――強烈な印象でした。

試しに問い合わせてみると、シブヤ大学のノウハウを横展開して姉妹校(京都カラスマ大学などで始まり、現在では全国9カ所あり)を運営していると。これは名古屋でもできるんじゃないかなと思ったんです。

――名古屋という地域を「学び」で活性化することが、大ナゴヤ大学設立の根本だったのですね。

加藤:はい、「学び」という切り口を大切にしています。なぜなら学びは誰にとってもフラットな欲求であり、生涯学習という観点でも、地域、行政、企業が一丸となって取り組めるテーマだからです。

誰もが先生、生徒に」――。これが大ナゴヤ大学のコンセプトです。先生、生徒といった分け方をせず、授業の参加者全員がアイデアを出し合う。目指しているのは「一方通行ではない授業」です。そして、かつては生徒として参加した人が教える立場になっていき、永続的につながっていく。そんな形になればいいし、名古屋の未来を担う人が、大ナゴヤ大学からたくさん誕生してほしいと思っています。

授業は十人十色、未来の都知事選から日本酒、ゴミ拾いまで

――学びのテーマはさまざまだと聞いています。具体的に印象に残っている授業はありますか。

加藤:個人的には、愛知県知事選挙をみんなで考える授業が印象深かったです。知事候補者全員が集まり、地域の未来について考える場になりました。高校生の参加者が「未来をどうしてくれるの?」といったストレートな質問を投げ、それに知事が全力で答えていく。政治の世界がかなり身近に感じられるようになった授業でした。

大野:授業テーマは本当に広く、過去には恋愛力アップ講座もあったほどです(笑)。その中で特に印象に残っているのは、街の酒屋さんで実施した日本酒の授業です。日本酒からは、日本の歴史や文化が学べます。しかし酒造は減少傾向にあり、今は日の目を見ない状態になっているのかもしれません。それを子供たちに伝承していくべく、授業で取り上げたのです。日本酒学を学んだり、実際にテイスティングをしたりすることで、日本酒とその文化について学べる機会が得られました。

大ナゴヤ大学に集った「ゴミ拾いレンジャー」(出展:大ナゴヤ大学)

生駒:私は、NGO「アース」と協力して実施したまちのゴミ拾いですね。メンバーがゴレンジャーの着ぐるみを着てゴミ拾いをする「ゴミ拾いレンジャー」という活動に取り組みました。ピンクレンジャーになったご年配の女性は、最初こそ照れていらっしゃいましたが、次第にごみひろいに夢中になっていました(笑)。大ナゴヤ大学って、大人の遊び心にあふれているんです。いい大人が真面目になって遊ぶというか。

遊び心というスパイスを取り入れ、誰かが新たな一歩を踏み出すきっかけを作る。それが大ナゴヤ大学の授業です。教室でレクチャーを受けるだけでは得られない学びがあるのではないでしょうか。

大ナゴヤ大学の方向性、伝える情報共有が不可欠に

――授業の数だけ、プロジェクトの数が増えていくと思います。大ナゴヤ大学では、授業の企画や運営をどのように進めていらっしゃるのでしょうか。

加藤:大ナゴヤ大学では「実験室プロジェクト」を設け、授業や取り組みをデータとして残し、ノウハウをためて今後のまちづくりに生かそうとしています。名古屋工業大学大学院と提携し、授業後に実施するアンケートの結果を分析し、授業ができるまでの過程を記録しています。授業を通じて街がどう変わったかを、地域の人に正しく伝えていくことが狙いです。

そこで大切になってくるのが、活動の情報を共有することです。大ナゴヤ大学は創立から2年が経ちます。最初は授業数も少なく、運営チームが毎週ミーティングで顔を合わせてスムーズに運営できていました。しかし、今では年間60もの授業が開催されています。運営メンバーの多くは自ら手を上げて集まったスタッフですが、本業と掛け持ちしており、活動時間帯もバラバラです。当然、定例会議に参加できないメンバーもいます。

私の役割は、大ナゴヤ大学の授業を支えるために、的確に情報を共有していくことですが、授業の把握に取りこぼしが生じるなど、情報共有に難しさを感じるようになっていたのです。大ナゴヤ大学では、授業の企画運営を手掛けるメンバーが15~20人、当日に授業を手伝ってくれるボランティアメンバーが約130人います。授業に必要な情報を、その授業に関連する人だけに共有するには、どうすればいいかを考えていました

――最初はどのように情報共有をしていたのですか?

加藤:連絡はメーリングリストが主体で、進ちょく管理はExcelとファイルサーバを使っていました。メールやファイルサーバをきちんと確認してくれるメンバーがいる一方で、「ほとんど見ていない」メンバーも当然出てきました。大量の情報が手元に届くのですから、すべてを確認できなくても無理はありません。必要なのは情報共有の仕組みだったのです。それはメンバーが不便を感じることなく、そして的確に大ナゴヤ大学の動きや方向性を共有できる状態を指します。

現在大ナゴヤ大学では、授業の企画や運営ごとにチームを分担し、それぞれの担当者の役割を明確にしています。チームごとの課題を明らかにして次の授業に生かすという「PDCA」を回すことも求められています。

NPOの運営で一番大事なのは、情報共有なのです。そういった仕組み作りを考えている際に、サイボウズLiveに出会いました。

改善案、「言いっぱなし」で終わらなくなった

――サイボウズLiveによって、情報共有の課題は解決できましたか。

加藤:サイボウズLiveを使うことによって、チームの進ちょくに加え、大ナゴヤ大学全体の活動が今どこに向かっているかを、直感的に把握できるようになりました。メンバーにとっても、サイボウズLiveを見ていれば、かかわっている授業の進み具合を気になった時に確認できるようになったと思っています。

生駒:メーリングリストでは連絡がしにくいと感じていまいた。メール受信数のことを考えると、ちょっとした書き込みがやりにくかったんです。メーリングリストに投稿する際には、タイトルの付け方や送信内容を吟味しなければいけません。一方サイボウズLiveでは、雑談トピックを掲示板に立てれば、授業終了後にメンバーが「お疲れ様でした」と気軽に書き込めます。メールの確認回数は確実に減りました。

大ナゴヤ大学で活用しているサイボウズLiveのトップページ

――メールの流量を減らせたのですね。そのほかにどんな機能を使っていますか?

加藤:主に活用しているのは掲示板とToDoで、運営グループごとに使っています。日付と案件名を入れた表題を付けるようにルール化して、授業の企画やアイデア出しに使っています。掲示板は「広報」「総務」といったチームごとに作り、情報を集約しています。会議中に新しい情報を書き込むことで、掲示板を簡易議事録のように使っています。

掲示板には「理想像」というトピックも立てました。ここは大ナゴヤ大学の将来や進むべき方向性について、僕の頭の中を整理して、書き出しています。考えのプロセスや背景も伝えられますね。「いいね!」が付くと励みになりますし、考えがメンバーに届いているのだと実感できますね。

加藤さんが考える大ナゴヤ大学の方向性をグループで共有している

また「言いっぱなしで終わらない」ための仕組み作りにも、サイボウズLiveが役立っています。「PDCA」というグループでは、授業の反省や振り返りを書き出しています。授業は開いて終わりではなく、より良いものに改善し続ける必要があります。もちろん話し合いでも改善案は出てきますが、それを実行するには、メンバーに意識してもらうことが大切です。サイボウズLiveでは出しあった案が明文化されるので、参加メンバーの改善に対する意識も高まっていると感じます。

「サイボウズLive for iPhoneは、iPhoneアプリの一軍なんです」

――その他、利便性を感じている部分はありますか?

加藤:授業が多岐にわたりますので、20名までは無料で複数のグループを作成して活用できる点はありがたかったです。またどんなメールアドレスでも登録でき、PC、スマートフォン、携帯電話と端末を選ばずにログインできる点もうれしいです。以前使っていた無料のWebサービスでは、登録できないメールアドレスのドメインもあり、苦戦した思いがあります。

サイボウズLive for iPhoneを軽快に使いこなす生駒さん

生駒:端末といえば、大ナゴヤ大学の運営チームでは、iPhoneの利用率が異様に高いんですよ。私の場合、iPhoneアプリ「サイボウズLive for iPhone」をホーム画面の最初に配置しています。TwitterやFacebookと同じく、アプリの“一軍”なんです。

加藤:みんな情報のキャッチアップが早くなっているなあと思ったら、僕の知らない間に生駒さんや大野さんがサイボウズLive for iPhoneを既に使っていたんですよね。さすがというか、僕も早く使いこなさないといけませんね(笑)。

また、「サイボウズLive IDEABOX」には、絶えず改善案やリクエストが出ていますね。Googleカレンダーとの同期も、早い段階で実現していましたし。この(サービス改善の)スピード感と拡張性はありがたいですし、いつアクセスしても問題なくつながる点も、情報共有サービスとして安心です。

 

地域コミュニティーの成功モデルに、そして全国のお手本に

――ありがとうございました。最後に大ナゴヤ大学の今後の展開について教えて下さい。

加藤:今や、大ナゴヤ大学にかかわる人は2400人以上になりました。一方で名古屋市の人口は225万人、愛知県は600万人です。より活動の認知度を上げていかなければいけません。まずは1万人の参加者を目指し、授業数も増やしたい。規模が大きくなればなるほど、名古屋に住む人同士は顔が見える関係になります。大ナゴヤ大学で学んだ人が、新しい地域活動を次々と生み出していき、名古屋でより良く生きていくきっかけになればいい。

それが積み重なると、「名古屋っていいね、あの形をうちでも目指そう」と言ってくれる地域が出てくるかもしれない。大ナゴヤ大学の姉妹校は、札幌から沖縄まで全国9カ所あり、それぞれが別の団体で運用されています。その中でも、大ナゴヤ大学にかかわっている人は一番多い。だからこそわれわれは地域活性化の成功モデルになるべきだと考えているし、全国のお手本になっていきたいです。

サイボウズLiveは、姉妹校でも使ってもらいたいですね。最初は学長やコーディネーター、グループなど限定する形で活用し、姉妹校全体で情報共有ができればいい。今は専用のWikiを使っていますが、よりダイレクトに話が進むかもしれません。

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